幻の木「榧」
榧の森づくり
300年先、榧の森を夢みて
現在、榧材は深刻な材料不足に陥っています。明治以降、榧の木は伐採が進み、囲碁・将棋が普及すると本榧盤の需要が急増。それに伴って大きな榧の木が激減し、樹齢の若い小径木までもが伐採されました。しかし、植林はほとんどされておらず、新しい木が育たないため絶滅に近い状態に。木材市場に榧が入荷することもほとんどなくなってしまいました。そのことを知った当社会長は、日本の榧をなくしたくないという想いで、30年以上前から植林を始めました。
榧に惚れこみ40年、森づくりに注ぐ情熱
榧の森づくりのはじまり
榧への取り組みは、お父ちゃん(会長 前川穎司)の囲碁好きが高じて40数年前より碁盤を集め始めたことがきっかけです。榧は、碁盤・将棋盤の最高級品で、色あいのよいきめ細かな木肌に緻密で美しい木目、打ち味や香りも素晴らしく、その魅力にすっかり引き込まれました。それからは、国内外から榧材を買い集めて碁盤をつくるようになり、早朝から深夜まで碁盤づくりに没頭することもありました。そんな中、日本の榧が絶滅に近い状態であることを知り、「このままでは榧がなくなってしまう。碁盤をつくる榧の木を育てたい」と思うようになりました。
種から研究を重ね、30万本以上植樹
種から苗木を育てる研究を重ね、榧の育ちやすい涼しい場所を探し、人の手がかけられなくなった荒れた土地を一から整備し、四国の山々に約30万本以上(※2016年時点)の榧を植えてきました。
しかし、山に残っているのは3割ほど。除草しないと草に負けてしまう、夏の暑さにも弱く、若木はシカやイノシシやウサギが食べてしまう・・・。そして、一人前の立派な榧の木になるには300年と生長が遅く、大変な労力と時間がかかります。
「だからこそ、榧がかわいくて仕方がありません。」
一生懸命育てた榧の木が、300年先に榧の森になると思うと幸せなのです。
「もう日本の榧は大丈夫やき。そればあの本数は植えた」
榧の危機を知り、植林を始め、毎日山に通っていたお父ちゃんも、「もう日本の榧は大丈夫やき。大丈夫という事は、もう絶滅することはないわい。そればあの本数は植えた。」と、笑いながら話してくれます。一人前の榧に育つのは300年も先のことですが、立派な榧の森に育つことを夢みています。
榧の実の活用
古くから利用されてきた榧の実の油
古来、榧の実から搾った油は利用されており、食用油のほか、頭髪油や灯火用油として用いられてきました。江戸時代に徳川家康が食した天ぷらは榧油で揚げられたもので、大正時代の「大植物図鑑」には「日本最上級の植物油」と記されています。
良質な植物油、爽やかな香りの精油に
当社では、植林した榧からとれた実を使い、盤のお手入れ用オイルや食用油のほか、世界で初めて榧の実の緑の果肉から抽出した精油や香水をつくりました。今はまだ榧の実も少なく生産量も限られていますが、榧の木の成長とともに量も増え、将来はもっとお客さまに喜んでいただける活用をしていきたいと考えています。
食用油と精油は「榧工房 かやの森」で販売しております。ご興味がございましたら、ぜひそちらもご覧になってみてください。